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子育て関連の本はたくさん読みましたが、本書は子育てに悩む、ほとんど全ての親御さんに間違いなく全力でお勧めできる良本です。
ただし、(私を含む)一握りの方たちを除いて。
まずは内容の抜粋です。
親の言うことを聞かない。困ったクセが直らない。学校に行かない……。子どもの「問題」には、必ず大切な意味がある。親はそのことをこころに留めて、やがて巣立っていく子どもを、どっしりとした構えで見守りたい。「子どもに去られるためにそこにいる」親の役割、それを支える心理的援助の実際を、多くの事例に基づいてやさしく伝える。
ー出版社より
「母親は、子どもに去られるためにそこにいなければならない」
心理学者、エルナ・フルマンの、有名な論文のタイトルだそうです。
これには、親が手を回したり導いたりしなくても、そうしないほうが子どもはしっかりと自立していくということが書かれているそうです。
と、ここまでが説明で。
もくじ
育児における突然のルール変更についていけぬ。
親なら誰しも、自分の子どもに自立した人間になれるように、マナーが身に着けられるように、社会のルールが守れるように、周りの人たちに愛されるようになってほしいと思うのではないでしょうか。
そのために、小さな頃から、
『ありがとう』を教えたり、
あいさつができるように練習したり、
食べ終わったお皿を下げるように教えたり。
そうやって、たくさんのことを教えて、手助けして育ててきていますよね。
なのに、『何かをしたり、答えを出すのではなく、ただそこにいて、子どもが振り返ったときに親が見守ってくれる安心感を与える』ために口を出すななんて。
『去られるために、ただそこにいる』なんて。
突然難しすぎませんか。
ケーススタディが多く、取り入れやすい実際的な知恵がたくさん!
とは言うものの、著者の臨床心理士で医師でもある田中先生が、実際にご経験されたケースでの具体的な対処法や、言うべきこと、言わぬべきことが詳しく書かれています。
なので全てを読み終わるころにはどういう態度で子どもと向き合うかがだいたいわかるようになっていました。
だいたい分かったからって、できるようになった訳ではないですけれど。
例えば、学校へ行き渋る子に言いがちな
『行きたかったら行ってもいいし、休みたかったら休んでいいよ』
というのは2重の命令になるからいけないとか難しいけれど、なるほど。
本当にどっちでもいいなら、何も言う必要がない、というのが田中先生の教えです。
とにもかくにも、用意が遅い子を急かすようなことも、受験が迫っているのに今一つ身が入らない子にも、学校へ行けなくなった子にも、見放すわけでは決してなく、かといって口も出さない。
子どもが自分で決断して親から離れようとしたとき、
振り返れば変わらず親がそこにいる、と言う安心感が何よりも大切だということです。
自立の苦労や苦しみは、子どもではなく、親(特に母親)が受け入れるのが大変だと。
(母乳をやめるとき、実は子どもより母親の方が寂しくてつらいということに似ている。)
でも親がその苦しみを耐え、去られるためにただそこにいることができた時、子どもは自分の力で旅立っていけるのでしょう。
とても難しいですが、やってみる価値はあると思わせてくれます。
看取りや認知症、介護など、親の問題のケースも。
途中、『コラム』のくくりで、先生が体験された介護などのお話も出てきます。
これがどれも本当に良くて!
特に印象に残っているのは、認知症のご夫婦のご主人の方に、治せない段階の胃がんがわかったはなし。
在宅介護を選ばれたのですが、この話をこの本に載せるために、再度ご家族に連絡を取った時のお話しまで含めて、心温まります。
ネタバレし過ぎちゃうのでかけないですが、難しいミッション満載な本書においての清涼剤のようです。
この本がおすすめできない人ってどんな人?私の経験。
こんなにおすすめする本書ですが、最初に書いた通り、『今読むのは適さない人』がいます。
それは、育児において、悩みがとても深く、長期間辛い思いを抱えてる方。
つまり、現在メンタルダウン状態にある方は向かないと思います。
その理由は2つ。
1つめはシンプルにおすすめされてる方法を試すことが難しいこと。
小言を言わない。
あきらめではなく、全てをあるがままに受け入れる。
これは今までもやりたくても出来なかったという方も多いと思います。
頑張ったけど出来なかった。
でも、これを強く推奨されていることで、自分の不出来さ、覚悟のなさが露わになり辛さが増してしまう。
「わかったけど、これ以上頑張れないよ」
というぐらい落ち込んでいるときには、読んでも有益さより辛い方が勝ってしまいます。
まずは自分のメンタルを安定させることを優先すべきです。
2つめは、1つめと重複する部分がありますが、親のつらさの解決を重んじているわけではないこと。
「子どもへの言葉かけ」を面接のテーマに決めることについて書かれたページから抜粋します。
言葉かけに注目するといういわば切り口が決まっていることで~(中略)、面接が深くなりすぎる(たとえば、親自身のこころの問題を扱っていく)のを防ぐことができるという特徴もある。
(中略)
子どものことはいったん置いて、親の問題、たとえば抑うつなどに取り組まねばならないこともある。
しかし、まずは苦しんでいる子どものことに取り組みましょう、と話し合って、そうすることが私の場合には多い。
ー不登校の子どもに、親が家庭でできること、より
別に何も間違ってはいないのです。
子どもに起きている問題(先生は問題ととらえていないことが多くありますが)を解決しにカウンセリングにかかっているのですから。
でも。
私はこれを読んでとても辛くて、そしてとても納得したのです。
私には、発達にかたよりがある子ども達の育児に、途方もなく絶望して、本当に生きているのが精いっぱいと思う日々が続いた時がありました。
年単位で待ち、ようやく子ども達のカウンセリングにつながった時、私にも何か支援が得られないだろうかと淡い期待を寄せていたのです。
結果はもちろんノータッチ。
当時は、先生も私の状態にお気づきになったはず、なのにどうして助けてくれないの!とさらに酷く悲観したりしました。
でも、この本の上記の部分を読んであたりまえのことを納得したのです。
先生方は『まずは子どもをたすけたい』。
そもそも年単位で待つほど支援を待つ子ども達がいるんですもの。
そりゃあそうです。私だってそう思っていました。
でも、親自身のこころの問題を扱うことが「面接が深くなりすぎる」といわれてしまうと、なんというか、今でもちょっぴり心が痛むのです。
なので、自分自身も助けてほしい!と思うほどに辛い方は、まずご自身のこころの状態をよくすることを優先ししてほしいです。
そこまで辛い場合には、絶対に他者の介入が必要ですので、区役所でもなんでも電話できるところにかけまくりましょう。
支離滅裂でもなんでもいいので、諦めないでいろいろなところに手を伸ばすことが必要です。
絶対にあなたを助けようとしてくれる方に出会えますから!
経験者として、その日が一日でも早くあなたに届くように心から願っています。
結論:やはり多くの親御さんにおすすめ
上記の『この本をおすすめできない人ってどんな人?』で書いた通り、現在本気でメンタルダウンをしている方を除き、学ぶべきところの多い良い本だと思います。
小言を控えた結果どうなったかだけでなく、たくさんのカウンセリングのケースが書かれおり、その全て一貫して見守ることの重要さがわかる内容になっています。
子ども達の小さかったころの延長で、どうしても口出ししたくなってしまう親心ですが、子どものために黙る大切さを私も忘れずにいたいと思います。
Mothers have to be there to be left.
母親は子どもに去られるためにそこにいなければならない
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