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【映画レビュー】『梅切らぬバカ』の感想|シネスイッチ銀座

先日、ミニシアターのシネスイッチ銀座にて話題の映画『梅切らぬバカ』を観てきましたのでレビューします。

ネタバレを含みますので、ご注意ください!

上映館が少なくてびっくりしたわ!
でも平日の昼間なら、席に余裕がある感じ!

しかも毎週金曜日はレディースデーで950円よ!!
うっかり木曜日に行っちゃったわ!!

ストーリーは?

梅切らぬバカでいさせてよ

監督は 和島香太郎 、主演は 加賀まりこ 。
老いた母親と 自閉症 を抱える中年の息子が社会の中で生きていく様、地域の偏見や不和といった問題を取り入れながら、親子との絆や他の人間との触れ合いを温かく描いたヒューマンドラマ 。
ーwikipediaより

まず、何か大きな問題が起きて、それを解決するような起承転結があるような映画ではありません。

ウィキペディアからの紹介の通り、親子が日常的に受ける差別や、悪意なき嫌悪感、それに対し軋轢を生まないように頭を下げ続ける日々、自分(母親)亡き後の息子の居場所を考えること・・・

ずっとずっと積み重なっていく小さな悩みや辛さを抱え込みながら、お隣に越してきた一家との関係の変化や、ささやかな日常の幸せを大事に過ごそうとする親子の物語です。

自分にもある小さな偏見の目

近所の方も、悪い人達ではないのです。

ただ、『近所』だからこそ、自分たちの『普通』のエリアを脅かさないでほしいという気持ちがあるだけだと思うのです。

大きな声を出してしまうこと。

動物(馬)が好きすぎて近づきすぎてしまうこと。

自分たちが不快に思うことが起きるから、きちんと『管理』してほしい、『自由に出入りしないようにしてほしい』という発想になってしまう。

これは恥ずかしながら自分にもあるなと思いました。

以前起きたわが子と自閉症をお持ちのクラスメイトとの間で起きたトラブルは、もしかしたらわが子が相手の苦手な状態を作り出してしまっていたかもしれない。

避けられたトラブルだったかもしれないと思う前に、されたことに目を向けて辛くなってしまいました。

謝りに出向くと言って下さった親御さんに、初めてですし大丈夫ですと断りを入れましたが、これが日常的に起こっているとしたらその親御さんの大変さや辛さはいかばかりかと今さらながら反省しています。

親亡きあとの将来への不安

母子2人きり、いろいろありながらも日々穏やかに暮らしている訳ですが、いつか息子を1人残していくことになったときに、安心して過ごせる居場所(生活の場)を整えてあげたい。

当たり前の親としての感情ですが、そこには「離れたくない、何も問題は解決していないけれどこのまま一緒にいたい」と思うのもまた当たり前の親としての感情だと思うのです。

必死に悩んで、決意して、近所の方とも対峙して、でも結局うまくいかなくて。

加賀さん演じる珠子が明るく言った、

『忠さんにこの町の有名人になってほしいんだ』

というセリフに、愛情が集約されている気がして胸にぐっときました。

近所の多くの方が存在を知ってくれていたら、自分がいなくても困っているときに協力してもらえるかもしれない、特性を理解してもらえていたら避けられたり、悲しいまなざしを避けれるかもしれない、そういった思いが込められているんじゃないかと・・・。

キャストの素晴らしさ!

そんなちょっと切なくなるような物語が進んでいきますが、決してお涙ちょうだいではないのがこの映画の素晴らしいところだと思います。

まずは加賀まりこさん。

私が語ること自体おこがましいですが、髪はぼさぼさ、身なりも疲れた日常的なものなのに、加賀さんのユーモアを忘れない、不寛容な世間にも屈しない明るさが映画全体を暗いものとせず、時にクスッと笑えるような温かい雰囲気を作っているように感じました。

それと忠男(忠さん)役の塚地武雅さん。

ご本人、どれ程研究されたのだろうと思うほどのリアリティー!

過剰な演技などなく、時折あるはっきりしたセリフも非常に実際的なお話の仕方で本当に驚きました。

コメディアンの方って芸達者な方が多い印象ですが、塚地さんはもう立派な一流の役者さんだと思います。(偉そうに申し訳ないですが。)

山下清さんとは全くの別物でした。

他にも上映館の少ない映画なのに、渡辺いっけいさんや、森口瑤子さん、林家正蔵さん、高島礼子さんなどすごい俳優さんがたくさんでてらして、それぞれの悲哀が伝わってくる実力派ばかりでした。

桜切るバカ梅切らぬバカ

個人的に印象的だったのは、隣人一家とのかかわりあい、関係性の変化です。

一家の主人、渡辺いっけいさん演じる里村の、当初忠さんや伸びきった梅の枝を疎ましく思う気持ちから、母珠子の寛大な愛に触れ、忠さんへの理解や受け入れる気持ちが出てきたところが嬉しかった。

梅の木は、剪定しなければ多くの実や花をつけることができない。

でものびのびとあるがまま、育つがままにしている梅の木と忠さんを重ねて、これでいいのだと静かに穏やかに受け入れる、梅切らぬバカでいさせてよ、そんな物語だったように思いました。

未来への不安、現在進行中の苦労、そんな中においても変わらない周囲への愛を自分は持ち続けることができるだろうか。

映画館の帰り道、思いふけりながら歩きました。

受け取り方や感じ方は観客に任せる、あたたかい小さな映画でした。

ちなみにシネスイッチ銀座では、毎週月曜日10時10分の回は、
上映中席を立ってもOK!声出しOK!入退室自由!「フレンドリー上映」を実施されています。

フレンドリー上映とは?
通常の上映環境より、場内照明を明るく、また音響は控えめにして上映するものです。
上映中に動きまわったり、声を出してもOK、また入退出自由です。
障害を持つ方や、小さなお子様連れでも安心して楽しめますね!

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